はじめに
「怒られないように」「迷惑をかけないように」——そんな思いから、“いい子”であろうと頑張りすぎていませんか?
特に新社会人や新しい部署に配属されたばかりの人が、自分でも気づかぬうちに“理想の新人像”を背負い込み、心身ともに疲弊してしまうケースは少なくありません。
この記事では、なぜ新人が“いい子”でいようとしてしまうのか、その背景にある“勝手な期待”の正体を解き明かします。そして、少しだけ肩の力を抜いて働くためのヒントを、ストーリー仕立てで具体的にご紹介します。
☑ その“いい子”像、誰が決めたの?
■ まじめな新入社員・美咲さんのケース
新卒でメーカーに入社した美咲さん。研修中から「質問はある?」「わからないことは遠慮なく聞いてね」と何度も言われてきました。
でも——
「忙しそうだし、何回も聞いたら迷惑かな…」
「あ、これって自分で調べればなんとかなるかも」
と考え、なかなか質問できない。
わからないまま仕事を進め、後でミスになってしまい、「どうして聞かなかったの?」と注意されて落ち込む。
「質問していいって言ったのに…なんで怒られるの?」
実はこれ、「いい子でいよう」とするあまり、自分の中で“期待されている理想の新人像”を勝手に作り上げてしまった状態です。
「自分で考えて動ける人」「周囲に迷惑をかけない人」「空気が読める人」——
そういった“理想像”を自分で自分に押しつけていませんか?
☑ なぜ“いい子”でいたいのか? その心理的背景
■ 1. 評価されたい
「いい子」でいることで、「この子はちゃんとしてるな」「優秀だな」と評価されたいという気持ちが無意識に働いています。
しかし、評価されたいという気持ちは、
- 失敗を避ける
- 周囲の空気を読みすぎる
- 本音を抑えこむ
といった形で表れ、かえって本来のパフォーマンスを出せなくなる原因になります。
■ 2. 周囲とトラブルを起こしたくない
「目立たずに波風立てずにやり過ごしたい」と思う人も多いはず。トラブルを避けるために、“いい子”であろうと無理をしてしまいます。
■ 3. 学生時代の「正解主義」の名残
学生時代は、「言われた通りにやる」「正解を当てる」ことが求められました。
社会に出てもその感覚が抜けず、
- 指示を細かく待つ
- 自分の判断を出せない
といった状態に陥りやすくなります。
☑ “勝手な期待”が生む悪循環
「新人は○○すべき」「こんなことも知らないの?」といった、自分の中にある“勝手な期待”が、次のような悪循環を生みます。
❌ わからないことを隠してしまう
質問する=迷惑と思ってしまい、「とりあえず自分でやってみる」が仇に。
❌ 忙しい上司に配慮しすぎる
「聞くタイミングがない」と思い込み、報告・相談が後回しに。
❌ 自分だけができていないように感じる
他の新人が活発に見えると、「自分はダメだ」と自己否定に陥る。
☑ 誰かの「すごい新人」と比較しない
「去年のAさんはすぐ戦力になったよ」——そんな言葉にプレッシャーを感じたこと、ありませんか?
でも、その人とあなたは経験も性格も違う別人。
■ “理想の新人像”の正体
- 空気が読める
- 自主的に動ける
- 指示されなくても気がつける
実際には誰もそんな新人、最初からは期待していません。
「最初からうまくやれる新人」ではなく、「少しずつ学んでくれる新人」が求められていることを忘れないでください。
☑ では、どうすればラクになる?
■ 1. 「完璧主義」より「進捗主義」へ
完璧にこなすよりも、「ここまでやった」「ここがまだ不安です」と言えることのほうが信頼されます。
例:
「資料は一通り揃えましたが、グラフの表示形式が自信がなくて…」
→ 上司はフォローしやすく、進捗もわかりやすい
■ 2. タイミングが難しいなら“予約”してみる
「今いいですか?」が苦手なら、
「13時ごろ、お時間5分いただけませんか?」
と予約感覚で質問タイムを取るのもおすすめです。
■ 3. 小さな成功体験を積み重ねる
“いい子”を演じるより、“できたこと”を積み重ねるほうが、自信になります。
- 上司に「助かる」と言われた
- 昨日より早く終わった
どんな小さなことでも「よし」と自分を認める癖をつけましょう。
■ 4. “できなかった自分”も記録する
ノートや日報に「今日つまずいたこと」を記録する。
それが次回の成長へのヒントになります。
☑ まとめ:あなたは、もう十分頑張っている
「いい子でいよう」とする気持ちは、真面目さの裏返し。
でも、その真面目さが自分を苦しめてしまうのは本末転倒です。
新人時代は、「完璧にできること」ではなく、「素直に学ぼうとする姿勢」が一番の武器。
“いい子”を目指すより、“あなたらしい学び方”で成長していきましょう。
☑ 付録:明日から使える“いい子脱却”フレーズ集
- 「わからなかったので、教えていただけますか?」
- 「このやり方で合っているか不安です」
- 「昨日はできなかったので、今日はここを意識します」
- 「自分で調べてみましたが、見当たらなくて…」
☑ 最後に
“いい子”でいたい気持ちはわかる。
でも、それよりも大事なのは、本当に成長できる環境を作ること。
そのために、あなたは「自分がどうしたいか」「どう感じたか」を、少しずつ言葉にしていくこと。
その小さな一歩が、周りにとっても自分にとっても、大きな信頼と安心を生みます。
自分を守るためにも、無理な“理想の新人像”から、そっと離れてみませんか?
あなたは、あなたのままでいい。