🧩 はじめに：素直にやったのに、なぜか怒られる
「言われた通りにやったのに怒られた」――新入社員がよく感じるこの“理不尽さ”。
これは決して珍しいことではなく、むしろ多くの人が一度は通る道です。しかもこのモヤモヤには、必ずといっていいほど“原因”があります。指示を出す側と受ける側、それぞれの立場のズレ。言葉の解釈、背景知識の差。そして、時には“空気を読む”といった曖昧な文化。
本記事では、「言われた通りにやったのに、なぜか怒られる」現象の背景を、実際のエピソードや心理的視点を交えながら紐解き、どうすればこのモヤモヤを回避できるのかを探ります。
⚠️ 新人あるある：「言われた通り」と「伝えた通り」は違う
● 例：資料のコピーを頼まれて…
ある新人が、先輩に「この資料、会議用に10部コピーしておいて」と言われました。新人はその言葉通り、紙を10枚コピーして提出。しかし、先輩の求めていたのは「ホチキス止めされた資料10セット」。結果、「ちゃんと確認しなよ」と注意されるはめに。
このような“すれ違い”は、言葉の捉え方と前提知識の違いが原因です。
新人は「10部」と言われれば「紙を10枚」と解釈する。
先輩は「10セットの資料」と当然のようにイメージしている。
つまり、お互いに“前提が違う”状態で話しているのです。
🤔 なぜこのズレが起きるのか？
● 「見ればわかる」文化の落とし穴
職場には、「これは常識だろう」「このくらい見ればわかる」という“暗黙知”があふれています。
しかし、新人にとっては全てが初体験。「コピーは10部セット」が常識であることも知らないかもしれません。
言葉では伝えているつもりでも、その言葉が意味する“行動の完成形”が共有されていないため、ズレが生まれるのです。
● 指示が“省略されがち”な日本の職場
特に日本の職場では、指示がかなり“あいまい”で“コンパクト”です。
- 「これ、よろしく」
- 「前のと同じ感じで」
- 「ちょっと手伝って」
これらは、相手の理解力に依存した会話であり、情報が圧倒的に足りません。
🧠 「言われた通り」でも責任を問われる現実
● 結果責任が問われるケース
新人が「言われた通りにやった」と主張しても、上司や先輩が見るのは結果です。
- 資料の配布が間に合わなかった
- 顧客に誤解を与える文言があった
- プロジェクトの進行が滞った
いずれも、「指示通りにやったかどうか」ではなく、全体として仕事が成立したかどうかが評価の対象になるのです。
● 上司の言い分：「言わなくてもわかってほしい」
特に忙しい上司は、細かい説明をする余裕がありません。
そのため、「指示した内容＋周辺の配慮」を含めて動いてほしいという“期待”を持ってしまいがちです。
この“期待”と“現実”のギャップが、「なんでそんなこともわからないの？」という叱責につながってしまいます。
💡 モヤモヤ回避のヒント：新人にできる防衛策
● 1. 具体的に確認し返す
指示を受けたときに、その場で以下のように確認しましょう。
- 「10部というのは、セットにしてホチキス止めも必要ですか？」
- 「前のと同じ感じ、というのは具体的にどういう点を指していますか？」
このひと手間で、曖昧な指示を明確にし、認識のズレを防げます。
● 2. メモ＋再確認が最強
口頭での指示は記憶に残りにくいため、
- 一旦メモを取り
- その内容を「こういうことですよね」と復唱
という手順を踏むことで、自分の理解が正しいか確認できます。
● 3. ミスしても“報告の早さ”で信頼を守る
万が一ミスが起きた場合、黙っていれば状況は悪化します。
- 「すみません、ホチキス止めが必要だと認識していませんでした」
- 「再度やり直します。あと5分いただけますか？」
このように素早く対処・報告すれば、誠実さが伝わり、評価が落ちにくくなります。
📚 職場エピソード：あの時の“誤解”が生んだトラブル
● エピソード①：「資料にまとめておいて」事件
ある営業職の新人が、上司に「今朝のミーティング内容を資料にまとめておいて」と言われ、議事録をWordで作成。
翌朝、「違う、こういうのじゃない」と怒られた。
実は上司が求めていたのは、PowerPointでのプレゼン資料だったのです。
「資料」と言っても、社内では用途や形式が決まっていることが多く、新人はその“文脈”を知らない。
● エピソード②：「軽く掃除しておいて」問題
先輩に「会議室、軽く掃除しておいて」と言われた新人。
ホワイトボードとテーブルを拭き、「これでOKかな」と思っていたが、
「イスの並びも直してないし、ゴミ箱もそのままじゃん」と怒られた。
“軽く”というあいまいな指示に対して、新人と先輩の基準がズレていたという例です。
✅ 上司や先輩にもできる「指示の出し方改革」
● 言語化をサボらない
上司や先輩の側も、「言わなくても伝わるだろう」という思い込みを手放し、具体的な指示を心がける必要があります。
- 形式は何か（Word、Excel、PowerPoint）
- どこまでやるか（提出、印刷、ホチキス止め）
- 期限はいつか（今日中？何時まで？）
● 「何かわからなかったら聞いてね」だけじゃ足りない
新人は聞きづらいもの。だからこそ、
- 「この作業、初めてだよね？不安なところある？」
- 「自分も新人の頃、同じように失敗したよ」
と、声をかけやすい雰囲気づくりが重要です。
🎯 おわりに：ズレは“成長のきっかけ”
「言われた通りにやったのに怒られた」経験は、新人にとっては落ち込みの原因になります。
しかしそれは、仕事の本質に近づくための“通過儀礼”とも言えるのです。
指示の解像度を上げていくことで、仕事の精度も上がり、信頼される存在へと成長できます。
失敗を恐れすぎず、確認と報告を大切にしながら、日々のやりとりを積み重ねていきましょう。
