はじめに
「察してくれると思ったのに、伝わってなかった…」
職場でそんな経験はありませんか?
たとえば、
- 忙しそうな上司に話しかけるタイミングを見計らっていたら、結局何も伝えられなかった
- 仕事の優先順位を勝手に判断して進めたら、あとから「それ、頼んでないよ」と言われた
- 自分では十分に説明したつもりが、相手には伝わっていなかった
このような“すれ違い”は、「言わなくてもわかってくれるだろう」という思い込みが原因になっていることが多いのです。
でも、職場では「察する文化」だけに頼っていると、トラブルのもとになります。この記事では、“言葉で伝える力”をどう育てていくかを、ストーリーや具体的な例を交えて紹介していきます。
ある新人のケース:佐藤さんのモヤモヤ
入社3か月目の佐藤さんは、ある日上司からこう言われました。
「君って、なんか“報告”が少ないよね」
佐藤さんは驚きました。こまめにチャットで報告しているし、わからないことはメモをとって確認もしているつもりだったからです。
「あれ?足りなかったかな…」
そう悩んだ佐藤さんですが、実は問題は報告の“内容”と“タイミング”にありました。上司が期待していたのは、「今どんな進捗で、どこに課題があるか」「次に何をしようとしているか」といった“思考の流れ”を共有することでした。
つまり、ただの結果報告ではなく、過程や意図も含めて“言語化”する力が求められていたのです。
「言わなくても伝わる」は幻想
日本の文化には「空気を読む」「察する」という暗黙の前提があります。
確かにそれはチームワークに役立つ面もありますが、ビジネスの場では逆効果になることも。
たとえば…
- 自分では遠慮して伝えなかった意見が、後になって「どうして言わなかったの?」と責められる
- 曖昧な指示に対して「こういうことだろう」と思って動いたら、まったく違っていた
これらは、発信側も受信側も“前提”が異なっていたからこそ起こるすれ違いです。
✔ 「察してほしい」は、期待するだけで伝わらない
✔ 「伝える努力」をすることは、相手への誠意の表れ
なぜ“伝える”のが難しいのか?
「伝えるのが苦手…」「何をどう言えばいいかわからない…」という声も多いですが、その背景にはいくつかの原因があります。
原因①:完璧に話そうとしてしまう
「きちんと整理してから言わなきゃ」と思って、口ごもってしまう。
→ 大事なのは“完璧さ”よりも“意図があること”。整理は後からでもできるので、まずは話し始める勇気を持ちましょう。
原因②:「こんなこと言っていいのかな?」と遠慮してしまう
→ 実は、他の人も同じ疑問を持っているかもしれません。特に新人なら、「質問」や「確認」は歓迎されることが多いです。
原因③:言語化の経験が少ない
→ 「あれをあれしておいて」と言って通じる関係もあるかもしれませんが、職場はそうはいきません。
言葉にする練習をしないと、「伝えたつもり」が増えるだけです。
“伝える力”を育てる3つの習慣
①「話す前に、頭の中を1行にまとめてみる」
「今言いたいことは?」を自分に問いかける習慣を持ちましょう。
たとえば、
- ❌「あの件なんですけど…その…」
- ✅「〇〇の件で、確認したいことがあります」
ワンクッションの“要約”があるだけで、相手も受け取りやすくなります。
②「なぜそれを言いたいのか?」までセットで伝える
内容だけでなく、背景や目的も伝えると、説得力が増します。
たとえば、
- ❌「提案です」
- ✅「提案があります。今の方法だと〇〇に時間がかかっているので、こう改善したいと考えています」
「なぜ?」を説明することで、相手も納得しやすくなります。
③「相手がどこでつまずきそうか」を想像しておく
伝えるときに、「どの部分で相手が誤解しそうか?」「補足が必要な部分はどこか?」と考えるクセをつけましょう。
伝えることは、相手に“理解してもらうための設計”でもあるのです。
伝える力を鍛えるためにできること
📘 スキルアップのためのアクション例
- 自分の発言を、あとで振り返るクセをつける(どこが伝わらなかったか、など)
- 上司や先輩の伝え方を“観察”して真似してみる
- 会議の議事録を書いてみる(要点をまとめる力が鍛えられる)
- 「伝える練習」を、1人でもできるようにスマホに録音して確認
💬 よくある誤解とその対策
- 「説明が下手だから伝えるのが不安…」
→ 下手でもOK。まずは“伝える姿勢”が評価される - 「忙しい人に話しかけていいのか分からない…」
→ 最初に「今、お時間大丈夫ですか?」の一言を添えれば失礼にはなりません
💡 伝えた「つもり」にならないために
よくあるすれ違い例
- 「共有済みです」→ 実際は“どこで、どんな方法で”共有したか伝わってない
- 「昨日話したじゃないですか」→ 伝えた内容が曖昧、相手の記憶にも残っていない
対処法
- 伝えたあとは、「理解できたか」「相手がどう受け取ったか」まで確認する
- 要点をテキスト化(チャット・議事録)しておくと、記録にも残り安心
終わりに:伝えることは、相手との“橋”をかけること
伝える力は、単なる“話す技術”ではありません。
相手と信頼関係を築くための橋をかける行為です。
「言わなくてもわかってくれる」は、残念ながら幻想です。でも、少しずつでも伝える力を意識して育てていけば、確実に誤解は減り、仕事がスムーズになります。
最後にもう一度、大事なポイントをまとめます。
- 💬 「察して」はやめて、「伝えて」みよう
- 🧠 まず1行で伝えたいことを整理する
- 💡 背景や目的もセットで言葉にする
- 👂 相手の理解度を確認する習慣を持つ
明日から、ほんのひと言、意識して伝えてみませんか?
きっと、職場のコミュニケーションが変わっていくはずです。