はじめに|あれ、なんで白黒なの?
「パトカーって、なんで白と黒なんだろう?」
ある日、大学生のナオトはふとそう思った。信号待ちの交差点、隣のレーンに停まったパトカーを見て気づいたのだ。白いボディに黒いフェンダー、赤い回転灯──このインパクト、なんとも言えない。
「もっと明るい色のほうがかわいいし、親しみやすくない?」
隣にいた友人のサチコが言うと、ナオトは苦笑い。
「でもさ、あの色だからこそ、“パトカーが来た”ってすぐわかるんじゃない?」
そのときの疑問が、ナオトのちょっとした調査を始めさせた。今回は、そんなナオトの“なぜ?”に答える形で、パトカーの色に隠された秘密をひもといていこう。
🚓 街で目立つパトカーの色
・あえて目立つ白黒デザイン
パトカーは、街中でもすぐに見つけられる。遠くからでも一目で「あ、パトカーだ」とわかるのは、あの特徴的なツートンカラーのおかげだ。
なぜあんなに目立つのか?実は、白と黒のコントラストは、人の視覚に強い印象を与える組み合わせのひとつ。信号や標識にもよく使われる色の組み合わせだ。
・遠くからでも「パトカーだ」と分かる工夫
視認性だけでなく、「あえて見えるようにしている」ことがポイント。パトカーがこっそり隠れて取り締まる、というよりは、
- 「ここに警察がいるよ」
- 「安心してね」
というメッセージを発している側面もある。
ただし、取り締まりのための覆面パトカーは別。あれは逆に“目立たない”ことが目的なのだ。
🧠 白黒ツートンが与える心理的インパクト
・威圧感と安心感を両立するカラーリング
ナオトが街頭インタビューで聞いてみたところ──
「白黒のパトカー見ると、ドキッとするけど、安心もする」(主婦 40代)
という声が多かった。
実はこの反応、まさに警察の狙い通りなのだ。白の清潔感・安心感と、黒の威厳・重厚感。この2つをあわせることで、
- 「市民には安心を」
- 「違反者には威圧を」
という心理的メッセージを同時に発している。
・「モノクロ=公的・権威」のイメージ
モノクロの配色は、昔から制服や儀礼的な装飾に使われてきた。
- モノトーンのスーツ → フォーマル
- 白衣や黒衣 → 専門職・権威の象徴
こうした文化的背景もあり、白黒は「ちゃんとした人が乗っている車」に見えるというわけ。
📚 パトカーの色はいつから白黒になった?
・戦後の混乱期、目立つ色が必要だった
戦後の混乱期、日本各地で治安の回復が急務だった。そのとき、「目立つ車両」が必要とされた。
初期のパトカーは、実は白単色のものや、茶色い車も存在していたという。
だが、昼夜問わずに目立つ色──つまり、白黒のツートンが採用されたのは、1950年代後半のこと。
・かつては茶色や青のパトカーも存在した
戦前は軍用車の払い下げが多く、深緑や茶系の車体が多かった。
一方、地方自治体が独自に運用していた「交通巡視車」は青系の塗装もあった。だが、統一感や視認性の観点から、国家公安委員会が現在のカラーに落ち着かせた経緯がある。
🌍 世界のパトカーの色はバラバラ?
・イギリスは黄色と青の市松模様
ロンドンを歩くと目に入るのは、黄色×青のチェッカー模様のパトカー。
これは「バテンバーグ・パターン」と呼ばれ、警察官の制服や車両の視認性を高めるために開発された。
・アメリカは黒ベース、日本とそっくり?
アメリカでは黒に白ドアという配色が一般的。特にロサンゼルス市警(LAPD)の「ブラック&ホワイト」は、ハリウッド映画にもたびたび登場するおなじみの姿だ。
このあたりの影響を受け、日本も白黒のツートンを採用したのでは?という説もある。
🎨 なぜ白と黒に決まったのか?デザイン視点で考える
・白=清潔感・公的機関としての信頼
白には「清潔」「誠実」「公的」のイメージがある。病院や官公庁の制服にも多く使われている色だ。
警察もまた「市民を守る存在」。だからこそ、汚れの目立つ白をあえて選び、きちんとメンテナンスされていることで信頼感を与えている。
・黒=威厳・抑止力を感じさせる
黒は「重み」「格式」「緊張感」を与える色。
真っ黒だと怖すぎるが、白との組み合わせにすることでバランスが取れる。
つまり、
- 白:親しみ、信頼
- 黒:威厳、抑止
この両方を兼ね備えるのがパトカーの白黒配色なのだ。
🔧 実は機能面の理由もある
・塗装コストとメンテナンス性
白黒の塗装は比較的コストが安く、補修もしやすい。また、汚れが目立ちやすい白を使うことで、常に清掃・メンテナンスされている印象を保てる。
・夜間・昼間どちらでも目立つ配色
白黒は、昼の太陽光下でも、夜の街灯や車のライトでも視認性が高い。24時間活動する警察にとって、非常に合理的なカラーリングなのだ。
👮♂️ デザインが持つ「安心」と「緊張」のバランス
ある日のナオト──
夜、少し遠くのコンビニからの帰り道、ふと後ろを振り返ると、遠くにパトカーの姿が見えた。
「やばい、スピード出しすぎたかも…」とドキッとする。
だが、パトカーはゆっくりと巡回しているだけだった。
その瞬間、ナオトは妙な安心感に包まれた。
「これって…あの色のせいなのかな」
そう、パトカーの白黒ツートンは、人の感情に働きかける設計がされている。
- 緊張 → 行動の抑制
- 安心 → 地域との信頼
その両方を、色と形だけで伝える力がある。
🗣️ もしパトカーが別の色だったら?
試しに想像してみてほしい。
- ピンクのパトカー
- 水色のパトカー
- カラフルな迷彩柄のパトカー
いずれも「かわいい」「おしゃれ」と思うかもしれないが、安心感や威厳はどうだろうか?
やはり“警察らしさ”にはならない。パトカーの色はファッションではなく、社会との関係を築くコミュニケーションツールなのだ。
🔚 まとめ|白黒には理由がある
ナオトの調査は終わった。
「なるほど、白黒にはちゃんと意味があったんだな…」
彼はサチコに言った。
「かわいさとかオシャレじゃなくて、“伝える力”がすごいんだよ、あの配色」
サチコは少し笑って、
「でも、私が警察になるなら、ピンクの制服がいいな」
と冗談を言った。
パトカーの白黒カラー──それは、人の心理に働きかけ、社会との距離を調整する、よくできたデザインなのだ。
色と形には意味がある。毎日見かけるものでも、深く掘ればストーリーがある。
あなたも、明日からパトカーを見る目が少し変わるかもしれない。