なぜ将棋の駒は五角形なのか?形に隠された歴史と実用性

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知識

将棋といえば、日本を代表する伝統的なボードゲーム。盤上に並ぶ駒の形は、誰もが一目で「将棋」とわかる特徴的なシルエットをしています。

その形は、ほとんどが五角形。上辺が細く、下辺が広い形で、先端がやや尖っているのが特徴です。なぜ四角形や丸ではなく五角形なのか――この疑問には、歴史的背景、実用性、そして美意識が深く関係しています。

  • 五角形の形はいつから定着したのか
  • 形が持つ実用的なメリット
  • 他のボードゲームとの違い

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五角形の起源

将棋のルーツは古く、中国から伝わった象棋(シャンチー)や、インドのチャトランガにまでさかのぼります。これらは現在の将棋とは異なり、駒の形は円形や抽象的な石のような形をしていました。

日本に将棋が伝来したのは平安時代とされます。当初の駒は四角形や長方形で、厚みもまちまち。木片を削って作った素朴なものでした。その後、駒の形や大きさは少しずつ改良され、遊びやすさや見やすさが求められていきます。

現在の五角形の駒が登場したのは室町時代〜江戸時代のころ。上部の角を落として五角形にしたことで、盤上で駒の進行方向が視覚的にわかりやすくなり、さらに持ちやすさも向上しました。この改良は、単なる美的センスだけでなく、対局のスピードや正確性を上げる重要な進化でもありました。

また、江戸時代には将棋が庶民の間にも広まり、駒作りの職人が現れます。彼らは美しい書体や漆塗りなどを施し、駒の形も統一されていきました。この時代に五角形が事実上の標準形として定着します。武士階級や町人文化の中で、駒は贈答品としても珍重され、形の均一性はさらに重視されるようになります。


持ちやすさと視認性

五角形の駒は、単なる伝統美ではなく実用的な理由を持っています。駒の上辺が狭く下辺が広いため、指先でしっかりとつまむことができます。さらに盤に置いた際には安定感があり、駒が傾きにくく、正しい位置に配置しやすい形です。

  • 上辺が狭く下辺が広いため、指でつまみやすい
  • 盤に置いた際も安定感がある
  • 先端が進行方向を示すため、駒の向きが一目でわかる

この方向性が明確な形状は、駒の成り・不成の判別や、相手と自分の駒を見分けるうえでも重要です。将棋は駒が密集する局面が多く、視覚的な区別が瞬時にできることは大きな利点となります。

また、観戦者にとっても五角形の駒は視認性が高く、どの駒がどちらの陣営に属しているかを直感的に理解できます。これにより、対局の進行をスムーズに把握でき、観る将(観戦を楽しむ人)にも優しい設計といえます。


盤面での心理効果

尖った先端は、無意識のうちに前進や攻撃を連想させます。自分の駒が相手陣地に向かって並んでいるとき、その形状が攻めの姿勢を強調し、戦意を高めてくれます。

一方、防御側から見た場合、尖りが自分の方向を向いて迫ってくる様子は心理的な圧迫感を与えます。こうした視覚的な要素は、戦術や戦略の選択にも微妙に影響を与えることがあります。


材質と製作技術

駒の素材には、楓、黄楊(つげ)、黒檀などが使われます。五角形は木材からの切り出しやすさ耐久性のバランスが良く、長期使用にも耐えられる形です。

製作工程では、形を整えるだけでなく、漆や墨で駒名を記す書体の美しさ、彫りの深さなど、細部までこだわります。高級駒では手彫りの書体が施され、美術品としての価値も高まります。中には百年以上も受け継がれる名駒もあり、形の美しさと職人技が融合した逸品が存在します。


世界のボードゲームとの比較

チェスの駒は立体的で、人や動物、城などを模した形状が多く、視覚的に役割がわかる反面、方向性は示しません。中国象棋の駒は円盤状で、上から見て漢字で役割を区別します。

将棋の五角形は、平面での視認性と方向性を両立しており、この点で他のボードゲームにはないユニークさを持っています。形が持つ意味は単に文化の違いにとどまらず、ゲーム性そのものに影響を与えているのです。


現代の多様化

近年では、アクリル製や樹脂製、マグネット式の駒も登場しています。子どもや初心者向けには、駒の種類ごとに色分けしたセットや、ピクトグラムで駒種を表したデザインもあります。

ただし、公式戦では依然として木製の五角形が使われています。これは、形の安定性や視認性の高さ、そして長年培われた伝統美と実用性の両立が理由です。現代の道具が便利であっても、文化や競技としての価値を損なわない形が選ばれ続けています。


まとめ

将棋の五角形の駒は、単なる伝統の産物ではなく、実用性・視認性・心理効果を兼ね備えた形です。長い歴史の中で磨かれたこのデザインは、今後も将棋の象徴として、世界に誇る日本の文化を支え続けることでしょう。

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