☑ はじめに:「わからないことが、わからない」
会社に入ったばかりの頃、先輩から「わからないことがあったら、何でも聞いてね」と言われた。
――でも、その「わからないこと」がそもそも何なのかが、わからない。
これは、多くの新人が直面する“あるある”のひとつです。
- 聞きたいけど、そもそも「質問する内容」が思いつかない。
- タイミングを逃して、後で聞こうと思っていたら忘れてしまった。
- 忙しそうな先輩を前に、声をかける勇気が出ない。
そんな経験、ありませんか?
この記事では、「質問しづらさ」の正体と、乗り越えるための具体的なヒントを紹介していきます。
☑ 質問しづらいのは、あなたのせいじゃない
質問できないことに、罪悪感を抱いていませんか?
「もっと素直にならないと…」
「積極性が足りないのかな…」
そんなふうに自分を責めてしまう人も多いですが、実は質問しづらくなるのには“理由”があります。
■ 理由①:「新人だから」と気を使われる空気
先輩たちは、「無理にプレッシャーをかけてはいけない」と思って、あえて深く踏み込まずに接することもあります。
一見やさしい対応に見えるこの空気感が、かえって「壁」のように感じてしまうことがあるのです。
■ 理由②:自分の“理解度”を客観視できない
新人のうちは、「自分が何を知らないのか」も把握しづらいものです。
だから、「何がわからないか」を言葉にするのも難しく、質問の形にならないことがよくあります。
■ 理由③:「これは聞いてもいいのかな?」という迷い
- 「こんなこと聞いたら呆れられるかも…」
- 「前に説明してもらったのに、また聞くのは失礼かな…」
そんなふうに思って、質問をためらってしまう――。
でも、それは“気配り”でもあり、“謙虚さ”でもあるのです。
質問できないことは、決して「悪いこと」ではありません。
☑ タイミング問題:「今じゃないかも」の壁
■ 先輩の表情をうかがう日々
「このタイミングで声をかけていいのかな…?」
忙しそうにパソコンに向かっている先輩を前に、何度も声をかけるチャンスを逃してしまった――そんな経験がある人も多いでしょう。
ある新入社員のAさんは、朝から聞きたかった質問を抱えたまま、午後まで言い出せなかったといいます。
「午前中、先輩がずっと電話していたので…。
そのあとも別の人に呼ばれていて、タイミングを失ってしまって…」
■ 「ちょっと今忙しい」と言われたあとの沈黙
一度タイミングを見て声をかけたものの、「ごめん、今ちょっと立て込んでる」と言われてしまった。
その一言がショックで、その後なかなか話しかけられなくなる――。
これは新人だけでなく、誰にでも起こりうる“質問のタイミング”問題です。
☑ 「何を聞けばいいかわからない」問題
■ 情報が多すぎて、頭の中がごちゃごちゃに
入社してすぐは、覚えることが山ほどあります。
- 社内ルール
- ITシステムの操作方法
- 各部署の役割
- 社内用語の意味
「何を聞くべきか」を選ぶ前に、情報の多さに圧倒されてしまうのも無理はありません。
■ 「聞くべきこと」に優先順位がつけられない
たとえば、
- 明日の会議で必要な資料の作り方
- 今進めている業務の進捗確認
- 今後関わるかもしれないプロジェクトの話
どれから聞けばいいか分からず、結果「何も聞けない」という状態に陥ることも。
☑ どうすれば質問しやすくなる?5つのヒント
① 曖昧なままでも「相談」という形にする
「ちょっと自信がないので、一緒に確認してもらってもいいですか?」
と、相談ベースで切り出すだけで、質問のハードルがぐっと下がります。
② メモ帳に「聞きたいことリスト」を常備
すぐに質問できないタイミングでも、あとからまとめて聞けるようにリストを作っておきましょう。
メモするだけで「質問できていない」という不安が軽減される効果も。
③ 質問の「きっかけ」を作る習慣をもつ
朝の挨拶後や、昼休み明けのちょっとしたタイミングなど、日常の中で「ちょっとお話してもいいですか?」と切り出す習慣をつけておくと安心です。
④ 「質問したらメモをとる」をセットにする
同じことを何度も聞かないように、先輩の説明中にはメモを取りながら聞きましょう。
それによって、先輩も「この人は真剣に学ぼうとしているな」と思ってくれやすくなります。
⑤ 「自分なりの答え」を持ってから聞く
「◯◯だと思ったんですが、合ってますか?」
というように、自分なりに考えた仮説や意見を持って質問すると、理解も深まりますし、相手も回答しやすくなります。
☑ 先輩も「質問される側」に慣れていないこともある
意外かもしれませんが、先輩や上司の中にも、「どう教えたらいいかわからない」という人は少なくありません。
「聞かれれば答えるけど、聞かれないと何が分かってないかも分からない」
そんな立場にいる人も多く、「上手に質問されることで教えやすくなる」こともあるのです。
だからこそ、質問は「自分のため」だけでなく、「相手のため」でもあると思って、遠慮せずに伝えてみるのも一つの考え方です。
☑ おわりに:「質問は、遠慮よりも信頼の一歩」
質問することは、決して「恥」でも「迷惑」でもありません。
わからないまま進めてしまうほうが、後々もっと迷惑をかけてしまうことだってあります。
誰だって最初はわからないし、うまく質問できないこともあります。
でも、少しずつ「聞いてみる勇気」を積み重ねることで、信頼関係も深まっていくのです。
今日、ひとつでも「聞けた自分」を、ちゃんと褒めてあげましょう。
それが、社会人としての第一歩です。