街なかの建物、電車、商業施設など、どこに行っても目にする「非常口マーク」。
緑の背景に白い人が駆け出しているようなシンボルは、多くの人にとって当たり前の存在かもしれません。
でも、ふと疑問に思いませんか?
「なぜ非常口は緑色なの?」
「赤のほうが緊急っぽくて目立つのでは?」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。
この記事では、非常口マークが緑色である理由や、そこに込められた色彩心理学的・安全設計的な意味、
さらには世界の非常口マークとの違いについてもわかりやすく解説します。
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非常口マークのデザインと歴史
現在の非常口マークのデザイン
非常口マークには、以下のような特徴があります:
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緑色の背景
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白いピクトグラム(走る人+ドアのシルエット)
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ピクトグラムは文字ではなく「絵」
これは視覚情報だけで伝わるように設計された安全サインで、万が一の災害時に文字が読めなくても誰でも理解できるように作られています。
日本の非常口マークの誕生
現在の非常口マークは、1982年(昭和57年)に日本で制定されました。
制定したのは、財団法人日本消防設備安全センター。
当時は、火災や地震といった災害が相次いでいた背景があり、より分かりやすい避難誘導が必要とされていたのです。
緑色が選ばれた理由とは?
直感的な安心感を与える「緑」
緑という色は、私たちの感情に対して次のような心理的影響を与えるとされています:
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安心感・安定感
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自然・調和・静けさ
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「進んでよい」「安全である」という印象
つまり、「この方向に進めば助かる、安全な場所に向かっている」という安心感を無意識に伝えることができる色なのです。
赤は「禁止・危険」のサイン
赤色はよく「緊急」や「危険」を示す色として使われますが、非常口には不向きな面があります。
赤は視認性が高い反面、以下のような意味合いを持ちます:
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停止、禁止、立ち入り禁止
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危険、火災、緊急停止
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興奮、不安、緊張
そのため、もし非常口が赤いと「進んではいけない」と誤解される可能性があるのです。
色の持つ「文化的な意味合い」も影響している
色の意味は万国共通ではない
色に対する印象は、文化や国によっても異なります。
たとえば:
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日本:緑は安心、安全、自然
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西洋圏:緑は自由、癒し、ポジティブ
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一部の中東圏:緑は宗教的な神聖さを持つ色
緑が「ポジティブな進行方向」として共通理解されやすいことから、非常口のサインにも適していると考えられました。
世界の非常口マークと日本の違い
国際規格 ISO7010 と日本の「走る人」
現在、非常口のマークは国際規格(ISO7010)に基づいたものが多く採用されています。
日本の「走る人マーク」はそのデザインの代表格であり、日本発祥のピクトグラムが逆輸入され、世界中で使われているのです。
日本で生まれた「緑背景+白人型ピクトグラム」が、今では欧州・アジア・中東などさまざまな国でも導入されています。
一部の国では例外も
ただし、一部の国では以下のような非常口マークも存在します:
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アメリカ:EXITの文字+赤
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中国:緑ベースで人型マークは異なる形状
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フランス:矢印中心で人型がないことも
これらは過去の慣習や法制度の違いに由来していますが、今後は統一の方向に進む可能性もあります。
非常口マークの形にも意味がある
「走る人」はなぜ走っている?
あのマークの人物が走っているように見えるのは、単なるデザインではなく、「急いで逃げるべき」という意思表示です。
人が歩いているだけだと緊急性が伝わりにくく、火災や地震の際に避難行動が遅れてしまうリスクがあります。
そのため、あえて「勢いよく出口に向かう人」が描かれているのです。
まとめ:非常口の緑色には深い意味があった
普段は見過ごしがちな「非常口マーク」ですが、その色や形にはたくさんの工夫と意味が込められていました。
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緑色は「安全・進行・安心感」を与える色
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赤色は緊急・禁止を連想させるため避けられた
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ピクトグラムのデザインは日本発祥で、今では世界中で使われている
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色彩心理だけでなく文化的背景にも配慮されている
こうしたサインに込められた意図を知っておくことで、万が一のときにも冷静に行動できるかもしれません。
次に非常口マークを見かけたときは、その緑の安心感に目を向けてみてください。