私たちが建物の中で必ずと言っていいほど目にする非常口マーク。緑色の背景に白い走る人のピクトグラムは、日本国内だけでなく世界の多くの国でも使われています。しかし、なぜこの色と形になったのか、そして世界ではどのような避難サインが存在するのかを知っている人は意外と少ないものです。
本記事では、その成り立ちや国際的な背景、文化的な違い、バリアフリーへの配慮、さらには未来の避難サインの可能性まで詳しく解説します。
🟢 非常口マークが緑色の理由
非常口マークの色が緑色である最大の理由は、「安全」を意味する色だからです。
- 色彩心理学的効果：緑は自然や安心感を連想させ、落ち着いた判断を促す色
- 国際的基準：ISO（国際標準化機構）やJIS（日本工業規格）では、安全を示す標識に緑色を使用することが定められている
- 視認性：暗闇や煙の中でも比較的見やすく、長時間目にしても疲れにくい
火事や地震などの緊急時、人は強いストレスと混乱に直面します。赤は危険や停止を示す色として交通標識や警告に使われますが、避難方向を示すサインには不向きとされ、安全に誘導するために緑が採用されました。
🏃♂️ 走る人のデザインの由来
現在の「走る人」の非常口マークは、1979年に日本のグラフィックデザイナー 太田幸夫 氏によってデザインされました。
- 直感的に「ここから出られる」と理解できるシンプルな図案
- 遠くからでも視認しやすい線の太さと構図
- 扉や出口の方向を矢印で示す派生デザインも多数存在
当初は国内向けの案内標識として誕生しましたが、その完成度の高さから1990年代にISOの国際規格として採用され、世界中で使われるようになりました。
🌍 世界の避難サイン事情
国や地域によって避難サインは異なります。
- アメリカ：赤または白地に「EXIT」と文字で表示。法律で色や形が定められており、ピクトグラムより文字が主流
- 欧州：日本と同様に緑地に白い人物のピクトグラムを採用。EU加盟国で統一規格がある
- 中国・韓国：緑色ベースに人物と矢印を組み合わせたデザインが一般的
文化や言語の違いにより、文字主体かピクトグラム主体かに分かれますが、近年は言語に依存しないピクトグラム型がグローバルスタンダードになりつつあります。
🔍 バリアフリーと非常口サイン
現代では、多様な利用者が安全に避難できるようにするための配慮が進んでいます。
- 視覚障害者向けの音声避難誘導システムと連動
- 車椅子マークを組み込んだバリアフリー避難口サイン
- LED点滅や発光パネルで煙の中でも見える工夫
- 多言語対応の電子表示板による情報提供
こうした改善は、高齢化社会や外国人観光客の増加に伴って重要性が高まっています。
🚀 未来の非常口マーク
今後の非常口サインは、デジタル技術との融合が進むと考えられます。
- 災害時にLEDライトが方向を示しながら点滅
- スマホアプリと連動し、最適な避難経路を個別に案内
- AR（拡張現実）技術で、現実空間に避難ルートを重ねて表示
- 混雑状況や障害物情報をリアルタイムで反映
これにより、より的確で安全な避難誘導が可能になります。
✅ まとめ
非常口マークの緑色と走る人のデザインには、安全心理・国際規格・視認性といった多くの理由が込められています。日本発のデザインが世界標準となった背景には、シンプルかつ直感的なビジュアルの力がありました。
今後も技術の進化や社会の変化に合わせて、避難サインはさらに進化し、あらゆる人が安全に避難できる世界を支えていくでしょう。
