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はじめに:ゴミ収集に“未来”はあるのか?
私たちの日常に欠かせない“ゴミの回収”。 日本では収集車が定時に巡回し、袋詰めにされたゴミを手作業で回収していくのが一般的です。
しかし、ノルウェーの港町・ベルゲンでは、そんな常識を覆すような「真空式ごみ収集システム」が導入されており、世界から注目を集めています。
この仕組みは、「ゴミを道路の下にあるパイプで一気に吸い取って集積施設へ送る」というもの。今回はこの次世代インフラの仕組み、導入背景、メリット・課題、日本への応用可能性について、雑学としても楽しめるように詳しく解説していきます。
ベルゲン市とは?
ノルウェー西部に位置するベルゲン(Bergen)は、人口約28万人の港町。 美しいフィヨルドと中世の木造街並み「ブリッゲン」で知られ、世界遺産にも登録されています。
その一方で、歴史的景観を守りながら近代化を進めるという難題を抱えていました。特にゴミ収集については、狭い石畳の路地や観光客の増加により、従来の収集車がスムーズに動けず、騒音や衛生面で課題が山積みでした。
こうした背景の中で導入されたのが、「真空式ごみ収集システム」です。
真空式ごみ収集システムとは?
地中パイプで“吸い込む”新しい収集法
この仕組みは、街中の各所に設置された投入口(ゴミステーション)から、地下に張り巡らされたパイプを通じて、ゴミを真空吸引で集めるというものです。
具体的には:
- ゴミを投入口に投入すると、定期的に中央の集積場が作動
- 空気の圧力差を利用して、パイプ内を秒速70kmでゴミが流れていく
- 集積場に到達したゴミは分別され、大型コンテナへ格納
まるで「街全体が掃除機のように動いている」かのような仕組みです。
実際に使われている地域
ベルゲン市内のブリッゲン地区を中心に設置されており、住宅地・商業施設・観光地などさまざまな用途で利用されています。 また、世界ではスウェーデン・ストックホルムや韓国・仁川空港、アブダビなどでも導入されています。
このシステムのメリットとは?
1. 景観を損なわない
ゴミステーションは地上に最小限の構造物しかなく、街並みに溶け込みやすい設計。中世の街並みを守る上で非常に有効です。
2. ゴミ収集車の削減
地上を走る収集車の数が大幅に減り、交通の流れがスムーズに。 観光地にとっては、騒音・排気ガスの軽減にもつながります。
3. 衛生面の向上
密閉型のゴミ収集システムにより、悪臭・虫・ネズミの発生が大きく抑えられます。清掃員の作業負担や事故のリスクも減少。
4. 労働力不足への対応
自動化により、作業員の高齢化・人手不足への対応にも貢献します。
一方で課題もある
初期導入コストが非常に高い
地中にパイプを通すため、数十億円規模の投資が必要。建設時には交通規制や地中埋設物の調査も必要で、時間もコストもかかります。
故障時の対応が大がかり
一部のパイプに不具合が起きた場合、地面を掘り返す必要があるため、メンテナンスの難易度が高いとされます。
住民側の協力が必要
分別や投入口の使い方を正しく守らなければ、パイプの詰まりや故障につながります。導入後の周知活動や利用マナーの啓発も欠かせません。
日本への導入は可能か?
過去に導入例はある?
実は日本でも東京都江東区の豊洲地区や、福岡市の一部開発エリアなどで試験的に導入された例があります。ただし、規模は小さく、コスト面から広域展開には至っていません。
課題と可能性
- 地価が高く、埋設工事が難しい都市構造
- 自然災害(地震・豪雨)に対する耐性の確保
など、日本固有のハードルはありますが、
- 新しい都市再開発エリア
- 観光地や歴史的街区
などでは、限定的に導入される可能性は十分にあります。
ゴミ収集の未来を考えるきっかけに
環境問題、労働力不足、高齢化、観光地保全──こうした社会課題に対して、「地面の下でゴミを集める」という一見突飛なアイデアが、現実のインフラとして成立していることは大きな驚きです。
ベルゲン市の事例は、
- ゴミの“見えない化”
- 効率的なインフラ設計
- 美観と環境の両立 を同時に達成した先進的な試みといえるでしょう。
まとめ:ゴミが消える街の可能性
ノルウェー・ベルゲン市の真空式ごみ収集システムは、未来の都市インフラのあり方を提示してくれる好例です。
「ゴミを見せない街づくり」が実現すれば、清潔で快適な生活だけでなく、住民の意識や観光地の魅力にも好影響を与えるかもしれません。
日本でも都市開発の一環として、こうした仕組みが広がる日は、そう遠くないのかもしれません。
少し先の未来をのぞく気分で、この記事が“都市の裏側の知識”として楽しんでいただければ幸いです。